高品質であることを差別化するために、決められた農園の名前が付けられたコーヒー豆や、その農園の中でもより厳しい基準をクリアしたコーヒー豆のことです。
従来のコーヒー豆の品質規格は、欠点豆や異物混入の数、標高、豆の大きさなどが基準となっていました。しかしそれは生産国側の都合で決められた基準ということもあり「味覚」に関する基準はありませんでした。1970年代に入り、アメリカで「従来の基準ではコーヒーの味を正当に評価できない。新たにコーヒーの味を正当に評価するための基準を作る必要がある」という声が高まりました。その時にはまだスペシャルティーコーヒーという言葉はありませんでしたが、1978年、アメリカのクヌッセンコーヒーのクヌッセン女史がフランスの国際コーヒー会議で初めて「スペシャルティーコーヒー」という言葉を使用しました。その際の説明では、“特別な気象・地理的条件がユニークな風味特性のあるコーヒー豆をつくる” というものでした。
そして1990年代の半ば、消費国が客観的な品質基準を設け、生産国、地域、農園、生産者、品種、精製方法に至るまでの消費者に渡るまでの過程を明確にして産地特有の味や香味の豆を評価する新しい基準ができ「スペシャルティーコーヒー」と呼ぶようになりました。
その背景には、コーヒー業界の危機があったのです。
1980年代、最大コーヒー消費国のアメリカでは低品質のコーヒーばかりが出回り、コーヒー離れが加速。コーヒーマーケットが縮小していきました。
その救世主となったのが、コーヒー業界の復活をかけた「スペシャルティーコーヒー」の登場だったのです。
1982年アメリカ・スペシャルティーコーヒー協会(SCAA)発足。
1998年にヨーロッパ(SCAE)、2003年に日本にも協会(SCAJ)が設立されました。
この頃、豆のクオリティに着目したスターバックスコーヒーの躍進で、世界的にスペシャルティーコーヒーが広まっていきました。
更には、高品質のコーヒーを作る生産者にしっかりした対価が支払われるようにするための一つの施策として、1999年、ブラジルで「カップ・オブ・エクセレンス」(COE)という国際品評会が始まりました。
生産者が選りすぐりの豆を出店し、国内審査員と国際審査員が評価し上位入賞の豆はスペシャルティーコーヒーの中でもトップオブトップとしてオークションに出店され高額で落札されます。
日本でも落札するグループが増えており、少しずつ飲めるチャンスが広がっています。
「スペシャルティーコーヒー」の定義や味覚評価の定義などは実は協会ごとに微妙に異なっているのが実態のようです。アメリカ(SCAA)の場合は味覚基準で80点以上を「スペシャルティーコーヒー」とするという基準を定めていますが、日本(SCAJ)の場合はそういった点数基準は設けられていないようです。
なお、味覚評価はCOE方式とSCAA方式があります。日本では一般的にCOE方式がとられているおり、主に以下のような項目が評価の対象となっています。
透明感・雑味のなさ(クリーンカップ)、甘み(スイートネス)、酸味(アシディティ)、口当たり(マウスフィール)、風味・香味(フレイバー)、後味(アフターテイスト)、バランス、総合点。
どの項目も強弱ではなく「質」が見られ、特に個性が強いものが高得点になりやすいようです。
スペシャルティーコーヒーの流通量はコーヒー全体の5%~10%ほどと言われています。
Coffeeコーヒーの話
2019.06.07 更新 コーヒーを知る楽しむコーヒー豆の基礎知識 1427 Views